[Event] 写美三連発

写美[東京都写真美術館]で開催中のイベント3つに行ってきました.イベントは,[コラージュとフォトモンタージュ展],[写真新世紀],[PARALLEL NIPPON] です.
その名の通りコラージュとフォトモンタージュを集めた展示です.コラージュの初期,前衛芸術とコラージュの関係,現代のコラージュを紹介する3部構成で,それぞれの時代の作品を見ながら当時のコラージュがどういう意味を持っていたか/いるかを示しています.昔のカメラでは空と海の風景の両方を鮮明に撮影することができなかったので,それぞれを鮮明に撮影したものを切り貼りして作ったのがフォトモンタージュの始まりだとか.最近のデジタルカメラで撮影した画像の加工手法で High Dynamic Range Imaging と呼ばれているものに近かったようです. 時代が下るにつれて写真がメディアとして一般的に利用されるようになると,芸術家たちが写真を利用して別の意味を作り出すようになっていきます.それがよく伝わる構成でよかったです.パンフレットの解説の[創りものの世界]を読むとよりいっそう思います.印象的なのは,ギュスターヴ・ル・グレイ[海景],小石清[燐素],本庄光郎[意識の流れ],大束元[東京の花火],石井茂雄[浮遊するフォルム],ジェリー・N・ユルズマン,ロバート・ラウシェンバーグ[オーヴァーキャストI],[NIPPON](雑誌)

写真新世紀は新人写真化の発掘・育成・支援を目的に1991年にスタートしたプロジェクトだそうです.その優秀賞作品が写美の2Fに無料で展示されているのですが,私が行った時にたまたま優秀賞受賞者のアーティストトークがあって,高木こずえさんのインタビューを聞くことができました.高木こずえさんの作品は「insider」というタイトルで,双子のように似ていて微妙に異なる顔の二人を並べた写真です.この写真は実は一人の人間の右半分だけで作った顔と左半分だけで作った顔なのです.それぞれ半分を反転して重ねあわせて左右対称にして,二人の人間を作るのです.するとそれぞれ微妙に違う顔になっていて,撮影された本人とも違う顔になるのです.その人だとわかるけれども微妙に違う,ちょっと不思議な写真で面白いです.右だけの自分,左だけの自分,両方を合わせた自分,自分の顔はどうなるのかな?と思うとわくわくします.ちなみにこの作品を選出したのは,森山大道です.清水朝子さんの「On her skin」はとても美しいです.こちらは南条史生選出.優秀賞は他に3作品あります.グランプリ選出が12/1に行われるそうです.展示は12/3まで.無料.

日本においてここ最近の10年で建設された代表的な建築を写真で紹介する展示.ヴォリュームがあります.コラージュと写真新世紀を見た後だったので,疲れていて見きれませんでした,残念.ここ10年に日本各地で建設された建築物から日本がどういう方向に進んでいくのかを建築から考えていこうとするのは試みとして面白いです.ただ,展示スペースが狭い気がします.展示の仕方と展示の順番などにもうちょっと工夫があるともっと楽しめるかなあ.アートスペースで見るというよりは百科事典的な内容なので本にして眺めた方が楽しめる感じです.12/3まで.ちなみに,コラージュとフォトモンタージュ展とPARALLEL NIPPON セットで1000円チケットがありました.

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[Event] ビル・ヴィオラ: はつゆめ

六本木ヒルズの森美術館で開催中の ビル・ヴィオラ: はつゆめ に行ってきました.
ビル・ヴィオラ
ビル・ヴィオラはビデオアートの第一人者だそうです.ナム・ジュン・パイクのアシスタントの経験もあるのだそう.今回展示されている作品のほとんどは,数十秒の出来事をスローモーションで撮影し数分から数十分の映像に仕上げられたものです.ふとした出来事,あるいは人の激しい感情表現の移り変わり,そういったシーンを現実生活では見ることのないほどのスローモーションで表現されたことにより,本来はありえなかった瞬間を体験し,新たな見知が得られるという作品です.例えば,ドロローサ[Dolorosa] は写真立てのような二面のモニタにそれぞれ悲しみにくれる男女の映像が映し出されています.スローモーションの映像なので写真に近いです.それぞれはただ泣くだけなのですが,スローモーションだと表情や首の角度,視線の微妙な変化あるいは涙の落下を見ながら,実時間の映像ならば絶対に思いつかないようなことをいろいろと考えるのです.それが新鮮で面白いのです.また,スローモーションによって炎や水が幻想的な美しさで表現されるのも素晴らしいです.
クロッシング[The Clossing] は 4m もある巨大スクリーンの表と裏それぞれに,炎に包まれる男性と水というか滝に打たれる男性の映像が映し出されます.男性は激しい炎や水に包まれてほぼ同時に消えてしまいます.炎のゆらめきやキラキラと輝く水滴の美しさが印象的です.ミレニアムの5天使[Five Angels for the Millennium] は 5つのスクリーンに5人の天使がそれぞれ水に沈む(あるいは巻き戻して浮かび上がる)シーンを映し出すインスタレーションです.ここでは,ゆらめく水面や水泡が美しく表現されています.他にも,幾重ものベールに前後から別々に投影された映像作品のベール[The Veiling] や老若男女の手が表現する宗教的文化的ないろいろな手のふりをする四人の手[Four hands] が印象的でした.

杉本博司
ビル・ヴィオラとは関係ないのですが,ちょうど一年前に森美術館で杉本博司の「時の終わり」を見ました.とても素晴らしい展覧会で,これがきっかけで美術館に頻繁に通うようになりました.その「時の終わり」のカタログを森美術館のミュージアムショップで発見してしまいました.なんと6000円もするのですが,同じものがハードカバーだと15000円,しかもソフトカバーはそこでしか販売していないということで購入してしまいました.でも買ってよかった.ビル・ヴィオラ同様,杉本博司の作品は写真によって本来的には目には見えないなにかを表現しています.例えば時間とか.杉本博司の作品は知性を刺激すると何か書かれていましたが,まさにそんな感じで面白いのです.そして美しい.

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[Design/Art Podcast] Tide Audio

Tide Audioは Design Tide のデザイナへのインタビューを主な内容としたポッドキャストです.ミラノサローネに作品を出展したデザイナによる自身の作品解説などもあります.デザイナが何を考えて作ったのか,どこを見るとよいかがわかるのでとてもよいです.ポッドキャストのアートワークが結構凝っていて話にあわせて紙芝居的にかわるのが楽しいです.
アップデートはイベントのある時期に集中的に行われているみたい.ただし今年(2006)の Design Tide のインタビューはまだないです.長さは数分から20分以下が多いです.ほとんどの外国人の話は日本語の通訳が入ってますが長いインタビューは入ってない場合もあります.ミラノサローネのインタビューはそうかも.2006/11/14現在で90本あります.


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[Event] Design + Tokyo

青山近辺で11月初めに開催されているデザイン系イベント2つに行ってきました.Tokyo Designer's Week の100% Design Tokyo と Design Tide です.

二つのイベント
aalto
同時期に同じエリアで二つ(3つ?)のデザインイベントがあるのですが,この違いについてNobiさんがわかりやすく説明してくれているので引用させていただきます.
「100% Design Tokyo」と「Tokyo Designers Week」は、ほぼくっついていると考えてOKです。ただ、TDWは絵画館前の会場以外にも、原宿、青山、赤坂、代官山、恵比寿、銀座あたりのインテリアショップ系も参加して、いろいろなイベントをやっています(でも、基本は絵画館前だけ押さえれば大丈夫)。

これに対して、やや「反体制」で「ゲリラ」的なのが、IDEEの創業者黒崎輝男さん率いるDesign Tide。黒崎さんはかのマーク・ニューソンなどのデザイナーを発掘した人物としても有名で、Paul Smithやらとも仲がいい。なんか、きれいにこざっぱりまとまる感がきらいで、思いつきみたいにあちらこちらでゲリラ的にイベントやるので、会場らしい会場があるような、ないような...


私の感想は,100% Design Tokyo は 幕張とかビックサイトのIT系イベントが青山絵画館前に来て少しこじゃれた感じ.絵画館前しか見てないですが,見本市的なのはいいとして大きすぎて見きれないのと,いまいちまとまりがなく長居する気が起きなかったです.見たい展示をあらかじめリサーチしておくべきだったなあと思いました.
Design Tide は 規模としては小さくて,今活躍しているアーティストを集めての展示会がメイン.なにか&Peaceがテーマでなにかはアーティストや参加者がそれぞれ埋める.日本から平和の再定義をしようというコンセプトがあっていいです.展示は実用デザインというよりはアートでした.カルティエ現代美術財団コレクション展(リンクはblog)で得た印象に近い感じで,カラフル,いい意味で軽い,楽しい そんな印象をうけます.

Design Tide
aalto

明治通りのビルのメインサイトと国連大学だけみました.どうくっつけても繋がる模様の不思議なマグネット式ピース[野老朝雄]とか,ゴミで作ったシャンデリア[Stuart Haygarth]とか面白いものがいっぱい.マグネットは新日本様式100選にも選ばれたそうです.黒田潔のライブペインティングもなかなかでした.[Domestic]による壁紙のデコレーションや[Ng & Vilde]の静物も好きです.[FRONT]の空間に描くスケッチファニチャは私が見た中では唯一,ITによる問題解決的なアプローチをしている展示でした.要は3Dオブジェクトのプロトタイピングにかかる時間を劇的に短縮するツールです.スカウターをつけてみられると完璧ですね.国連大学の夜のイベントもなかなかすてきで,小さな豆電球をつけた風船を無数にデコレーションしたのと,国連大学の建物に投影したピースマークがよかったです.

100% Design Tokyo

こちらは...うーんと,ちょっと印象に薄い...こちらもNobiさんの記事に.「デジタル家電の近未来デザインとは」(CNET Japan)

ところで写真撮影

どちらの会場も撮影は禁止.でもTideの方はみんな撮りまくりでした.私も撮りまくりました.TDW はあんまり撮ってる人がおらず,すごくお願いしても撮らせて貰えなかったりしました.撮らせてくれないのは盗作などを恐れているからでしょうか.ブログ全盛の時代なんだから,製品の宣伝にいいんじゃない?と思うのですがそうでもないのかなあ...でも撮っちゃった.

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