<生きる>展@横須賀美術館

2007年4月にオープンしたばかりの横須賀美術館に行ってきました.
横須賀美術館は観音崎の海が目の前に広がる最高のロケーションにあります.美術館の設計は山本理顕です.美術館の目の前はなだらかな芝生の坂,坂の向こうは道路をわたって海です.美術館の外観はほぼガラスで覆われていて,正面はレストランとミュージアムショップに占められています.レストラン Aqua Mare は 広尾にあるAqua Pazzaというお店の系列店だそうです.美術館は地下と地上の2階建てで,天井や横壁等さまざまなところから光が差し込む窓のある明るく開放的な空間です.展示は3つあって,4月27日のオープニングからやっている企画展の<生きる>展 (現代作家9人のリアリティ),所蔵作品を中心とした「近代日本美術を俯瞰する」展,そして谷内六郎(週刊新潮 表紙絵)展 です.

<生きる展>で印象的だったのは,まず石田尚志の手書きアニメーション"部屋/形態",かなり見入ってしまいました.実際に大学時代に住んでいた部屋をペンキで塗り一コマずつ撮影して,窓から入る光の移り変わりとともに部屋の中の宇宙が変遷する様子を表現しています.あまりにも気に入ったので,DVDお買い上げの予定です.石内都の写真 "INNOCENCE" は痛々しい手術痕を写真に収めています.なんとなく直視しにくい光景も写真になると正面から向き合うというのが新鮮でした.トらやんなどで有名なやのべけんじ"ミッキー・ザ・ナイト" はディズニーから制作を依頼されて作ったものの,趣向が合わないのでディズニーに断られたという作品.戦国時代の甲冑を着てねずみの兜をした像です.舟越圭の彫刻は大理石の目玉の美しさ,顔の美しさ,両性具有,妊婦,変なところから生えた手,メルヘンです.真島直子"密林の女"はリボンや花や毛糸などで飾り立てた倒錯感のあるトルソーで,何か臭いそうで好きです.そして,木村太陽"Big Mistake/Head-turner",これは衝撃的こわさです.人の形としては結構デフォルメしているはずなんですが,髪の毛の乱れ具合やポージングや体型がやけにリアルというか本物っぽい.その本物っぽさがいつ動き出すともしれない緊張感と相俟って非常にこわい作品に仕上がっています.森美術館の「笑い展」でも木村太陽の作品は見ましたが,明るいユーモアではなくブラックというかダークなユーモア,かなり鋭いセンスだと思います.
総括するとどのへんが<生きる>なのかと思うこともありますが,人間のあらゆる活動が生きることだと考えればなんの矛盾もありません.

なにより横須賀美術館のロケーションの素晴らしさ,開放的できれいな美術館,向かいには温泉施設,海に面して夜はかなり雰囲気の良さそうなレストランとアートな日帰り旅行には最適.


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昔の人がそうしたように,絵画によって人の感性を揺さぶろうとするのがこの人が絵を書く理由の一つだそうだ.ほとんどの絵は顔面かバストアップ,あるいは裸の全身像で常に人物が描かれている.笑顔は皆無で,アルカイックスマイルがせいぜい,あとは思慮に沈んでぼんやりしていたり,遠くを見て少ししかめていたり,つくらない表情がほとんど.写実的ではなく,顔形は適当だったり,顔のパーツはデフォルメされていたりする.でも表情がかなりリアルでこの表情に心が揺れる.そういえばマサトに言われた.「邪悪は凡庸である」私の母に似ていると.わたしはすぐ否定したけど,そうかもしれないと思った.モデルはたぶんマルレーネ・デュマス本人じゃないかな.企画展のブロークンホワイトというタイトルが気に入っていた.アラーキーの写真をモデルに描いた作品のタイトルだった.

ギャラリー小柳でも今マルレーネ・デュマス展をやっているようだ.こちらはより死があるようだ.


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ワタリウム美術館のブルーノ・タウトに行ってきました.地上4階の展示スペースがとても小さなワタリウム美術館です.2階は建築デッサンと建築物の写真や模型展示,3階はタウトが友人や家族に宛てた手紙,4階はタウトが手がけた日本の工芸品と熱海の日向邸中心.展示スペースは小さいのでどうしても展示は窮屈になってしまいますが,レイアウトやカラーがお気に入り.

2階のファンタジー満載な建築デッサンが非常に良いです.クリスタルハウス,アルプス建築,星の建築.フンデルト・ワッサーの時も思ったけど,日本のアニメーションを喚起させる要素があります.桂離宮について綴ったメモが展示されていました.このメモのとおりに歩いてみたい.

4階は一部が熱海の日向邸を模した造りになっていて,木の階段と赤い壁がきれい.ここは,タウト作の日本工芸品が多数展示されている.薄いガラスのデカンタというかトックリとグラス,流線型と漆の黒が美しい手つき鏡,木のナイフ,金色の塗りが美しい木の皿.木のチェアとのバランスが秀逸な漆のカフェテーブルなどタウトの優れた審美眼が光る品ばかり.同じクオリティでレプリカ作らないかなあ.


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