歴史の歴史@金沢21世紀美術館

杉本博司の個展が金沢21世紀美術館で行われてる!ということで、2008年12月の暮れ近くに行ってきました。(この記事の執筆は2009年9月です)

history of history
私が現代アートに興味を持つきっかけをくれた杉本博司の展示ということで非常に楽しみにしていました。かつて古美術商をやっていたこともあり膨大な美術品や歴史的なアイテムのコレクションを持っている方です。コレクションには、数億年前の化石、人類が誕生した頃につかってた石器、平安時代の仏教アイテムから18世紀の西洋の人体解剖図、そして第二次世界大戦のTIME誌の表紙コレクションや宇宙食まで。それらを杉本博司自身によって再構成された歴史を自身の作品とのミックスをしながら杉本の世界へ導いてくれるそんな展示でした。

鎌倉時代の小物に自身の海景の作品をはめこんだり、仏像の脇侍に19世紀のアメリカ人の大鬼蓮の版画を添えたり、あるいは、フィルムに放電して焼き付けた放電場シリーズ(雷の文様のような作品)と一緒に鎌倉時代の雷神像を配置してみたい、決して時間順ではないコレクションの展示方法はユーモアと示唆にあふれている。博物館に陳列あるいは死蔵された説明のある遺物は「ある特定のフレームで括られた歴史=歴史の教科書に載っている歴史」によって選ばれたアイテムなんだけれども、そういう既存の歴史とは異なった解釈で杉本博司自身がフレームとして切り出してきた歴史というか時間というかこの体験の中で出会う数々の遺物はもはや作品になっていて、どれも生き生きとして見える。今自分たちが信じている教えられている歴史もまた世の一面しか写してはいないというメッセージが込められた、まさにアートな展示なのでした。以下に杉本博司の展示にあたってのメッセージの一部を引用します。

天地開闢以来、幾多の文明が栄え滅びてきた。その度に歴史は書かれ又書き換えられてきた。歴史とは生き残った者が語り継ぐ勝者の歴史に他ならない。語り継ぐ者のいなくなった敗者の歴史は遺物となって その内に閉じ込められ、私に何かを語りかけてくる。数十億年前に絶滅してしまった生命の種が化石となって私に語りかけてくるように。こうして私は歴史から一歩距離を置いて、私が収集してきた遺物を眺め暮らすようになった。

私の集めた遺物達は、歴史が何を忘れ、何を書き止めたか、そんな歴史を教えてくれる。








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